【はじめに】 基本的に、ここで書くのは言葉的な解釈だけです。「曲のテーマ」とか「メッセージ」とかは聴いたひとそれぞれが感じるものなので、そのあたりの考察にまでは踏み込まないようにしたいかなと思います。

宇宙飛行士への手紙 / モーターサイクル
BUMP OF CHICKEN
トイズファクトリー
2010-10-13



【歌詞の大まかな意味】

ひとりで歩いた道を今でも覚えてる。
雨上がりの、雲の向こうから日が照る景色の中で歌ったことも。
その場所のにおいだって、
まるで色がついてるみたいに鮮やかに記憶に残ってる。
その頃の僕にとっての未来に、今の僕は生きている。

空を網目状に走った稲妻を今でも覚えてる。
その胸の高鳴りを説明する言葉なんかなかったけど、
僕は小さい体でとにかくそれを追いかけた。

ああ、でもダメなんだ、どれだけ言葉を尽くしたって、
あの日の思い出を君に伝えることなんかできない。
言葉にして伝えたところで、それは思い出そのものじゃない。
思い出を言葉に直したものでしかないんだ。

時間が許す限り、君と一緒にいたいって思うのは、
君と出会う前の時間を、
君と過ごせなかった時間を、取り戻したいと思うからだ。
今の時間だってすぐに過ぎ去って、二度と経験することはできなくなるからだ。
そんな悲しいことが起こらないうちに、
もっと一緒にいればよかったと後悔しないうちに、
僕は君との時間をめいっぱい手に入れておきたいんだ。

 

砂時計はいつも同じ時間を測るけど、その時間はそれぞれ別のもの。
同じ時間が繰り返されることはない。
この世の全ては、一度失ったら二度と取り返せない。
みんな、頭ではわかっている。

生きた本物の恐竜に触ってみたい。
宇宙の果てから地球を見てみたい。
僕の持ち時間があるうちに実現するのかな。
でもその時間ってどのくらいの長さなんだろう。
長いかもしれないし、もしかしたらすごく短いかもしれないんだ。

だからずっと一緒にいて、一緒にいろんなところへ行こう。
同じ思い出を、たくさん、ふたりで持とう。
それをなくさないように、何度も話してお互いに教え合いっこするんだ。
あんなことがあったね、こんなこともあったよねって。

死ぬときまで一緒にいたいなんて、現実的じゃないとは思いつつ、
それでも心の底からそう願ってしまうんだ。
だってこうやって奇跡みたいに、
君が生きている時代に居合わせることができたんだから。
そしていつか僕はこの世からいなくなって、夜空の星になって、
またひとりぼっちになってしまうと思うから。
でもその星の輝きは、きっと、君と過ごした思い出がくれる光だと思うから。

 

できればずっと、いつまでも、君のそばにいられればいいのにと思う。
君が遠慮がちに教えてくれた悲しい記憶を、
一緒にいられなかった頃の辛い思い出を、僕は知っているから。

命が終わる時まで一緒にいたい、なんて冗談みたいなことを
心の底から思えるようになれたのは、
その命の輝きを、あきらめることなく繋いできた君の命の輝きを、
君に見せてもらえたからだ。

そして僕らはいつか夜空の星になって、
お互いひとりぼっちになってしまうからだ。

でもふたりで過ごしたこの今の時間は、
いつか過ぎ去って取り返せないものになっても、
それがずっと先の未来まで、僕らの生きる力になってくれると思うからなんだ。

 

今度はふたりで歩くあの日の道。
僕らが生きている今は、未来と過去の間の、ほんのわずかな時間でしかない。
一度過ぎ去ったものは取り戻せない。
だからこそ全てに価値がある。
頭でしか知らなかったものに、僕は実際に出会えたんだ。



※ 2018/03/21更新