【はじめに】 基本的に、ここで書くのは言葉的な解釈だけです。「曲のテーマ」とか「メッセージ」とかは聴いたひとそれぞれが感じるものなので、そのあたりの考察にまでは踏み込まないようにしたいかなと思います。

aurora arc (通常盤)
BUMP OF CHICKEN
トイズファクトリー
2019-07-10



【歌詞の大まかな意味】

日が沈んで、空がだんだんと色を変えていくのを僕らは眺めていた。
それは、「何のための時間」とか「何のための場所」っていう
いつも僕らに付きまとうものからうっかり見逃されたような、
何のための時間でもないところ、何のためでもないひと時だった。

犬の遠吠えと急ブレーキの音が遠くから聞こえたことを覚えている。
僕らは分けあって飲んだコーラの瓶を間に置いて座って、
気の向くまま話をして、気の向くまま話をやめて、
はっきりしない歌のようなものをふたりで口ずさんだりもした。

そうやって一緒にいたのは、君としたいことが、
もしくは君にしてあげたいことが、何かあったからだと思う。
だけどそれは思いだせなくて、ただ、
君の明るい笑顔と、その隙間から漏れてくるような小さなため息が
頭の中によみがえるだけだ。

「行きたい所がわからなくてもいいと思うよ。
それはどこにでも行ける可能性があるってことだから」
そんな気休めみたいなことを僕は言ったかもしれないけど、
君はわかっていただろうし、僕だって本当は気づいていた。
人生はそんなに甘いものじゃなくて、
夢のような子ども時代っていうものは、いつか終わるものなんだって。

 

そうして僕がたどり着いたのは、同じようなことを繰り返す毎日。
それを続けるうちに、まるで盗まれたように時間が過ぎ去っていく。
自分の中にある大切なもの、
それが目を閉じたときにちらっと姿を見せるような気もするけれど、
たいてい気づかなかったり、気づかないふりをしたりする。

君と一緒にいたあの日、一歩手前まで行けたように思えて、
それでも踏みこめなかった何かがある。
面白い話をして、もしくは黙り込んで隠してしまった胸の思いがある。
僕は鍵やレシートと一緒に、言いたいことまで
ポケットに押し込んでしまったみたいだった。

シャッターが押されるのをじっと待っていた、写真の中のふたり。
僕らがレンズの先に見ていたのは、すごく幸せで、うらやまし過ぎるほど
希望に満ちあふれた未来だった。

だけど実際にやってきたその未来で、
僕はまた、昔と同じような胸の痛みを抱えている。
「僕らと同じ失敗をしたね」って、
動かない写真の中から、僕らふたりの声が聞こえるような気がする。

 

「何のための時間」と「何のための場所」に押しつぶされるようにして、
必死でそれに適応しようって努力していたら、
ふと耳の奥で響いた気がした。
あの日聞こえた、遠吠えとブレーキ音が。
君と歌ったあの歌のようなものを、僕はひとりで口ずさんだ。

きっと昔の僕は、君に言えなかったものを全部、
まるで紙飛行機にして飛ばすみたいにそっと、
カメラのレンズの向こうの未来の世界へ先送りしたんだね。

実際にその未来にたどり着くまでに、
君のいない日々はたくさん過ぎて、思い出はどんどん上書きされたけど、
写真の中にあの日はちゃんと変わらずあって、
そしてまっすぐ今の僕まで続いている。

行き先がわからないままでもいい。
それはどこにでも行ける可能性があるってことだから。
写真の君は笑っている。
僕も同じように笑っている。
いつか終わる子ども時代の先を見つめながら。

今の僕がいる未来に微笑みかけながら。