【はじめに】 基本的に、ここで書くのは言葉的な解釈だけです。「曲のテーマ」とか「メッセージ」とかは聴いたひとそれぞれが感じるものなので、そのあたりの考察にまでは踏み込まないようにしたいかなと思います。

R.I.P. / Merry Christmas
BUMP OF CHICKEN
TOY'S FACTORY Inc.
2009-11-25



【歌詞の大まかな意味】

(アルバムバージョンに合わせ、最初のフレーズは省略)

自転車のライトのモーター音を聞きながら、くねくねした坂を走ったこと。
買ってもらったあこがれの変速自転車なのに、ギアが誰かにいたずらされてたこと。
ザリガニ釣りの帰りに見た、正体不明のサーチライト。
どこから出てるのか探してたら道に迷って、すっかり夜になってしまったこと。

誰がギアにいたずらしたの? サーチライトの始まりはどこ?
そんなとりとめのない謎が、昔は覚えきれないほどたくさんあったけど、
いまはもう、不思議でも何でもなくなってしまったものもある。

雨の日に長靴を履くのは嫌いだったけど、傘を持てるのはうれしかったこと。
いくつも重ねたら秘密基地みたいになるから。
自転車置き場には尻尾の生えた友達がいて、しょっちゅう会いに行ったこと。

秘密の基地とか内緒の友達とか、
ひとには言えないことが昔はもっとたくさんあった。
でもね、寂しく思うのは、それがなくなってしまったからじゃないんだ。

その思い出の中に君がいないからなんだ。
昔は一緒じゃなかった君とは、昔の思い出を共有できない。
こんなの当たり前のことなのに、そのことを思うだけで泣きそうになる。

 

体温計の温度をわざと高くして、熱があるふりで学校を早退したこと。
下駄箱にさす夕日にため息をついたこと。
母の日の朝、お父さんと一緒に、いつも会いに通っていた友達をお墓に埋めたこと。

こんな悲しい思い出もいまは宝物だよ。
僕と同じように、君もそんな思い出をたくさん持ってるよね?

君の思い出の中に僕はいない。
それでも、いまは一緒にいることができる。
こんな当たり前のことを思うだけで、いまいる世界が輝いて見えてくるんだ。

 

同じ気持ちになれなくても、君と同じものを見られるだけで満足だ。
この世界にいつか変わってしまうものがあるのなら、
それを全部記憶におさめておきたい。
もし、いなくなるものがあるのなら、
せめて存在していた事実だけでも覚えておきたい。

 

君と一緒にいたくてもいられなかった人が、どこかにいるのかな。
もしかしたらいま、僕がその人の立場にいたかもしれない。
遠く離れた場所で君のことを思うだけだったかもしれない。
こんな当たり前のことを思うだけで、怖くて、眠れない夜もある。

君のいない僕の思い出。
僕のいない君の思い出。
一緒にはできない別々の思い出。
そんなの当たり前だけど、だからこそ、一緒にいられるいまを愛しく思えるんだ。
同時に怖くもなるんだ。
いま一緒にいられるのも、ほんの偶然かもしれないから…

 

昔、イベントでヒーローショーがあったこと。
空にはアドバルーンが浮かんでて、町は光化学スモッグでかすんでたこと。
僕は野球帽かぶって、大人に手を引かれて見に行ったこと。
すごく楽しくて、うれしくて、自分は地球で一番の幸せ者だと思ったこと。

できることなら、あの日の僕に君を見せて、
もっと大きな幸せがあるよと教えてやりたい。


 
【補足】
◆「尻尾の生えた内緒の友達」について
ナタリーのインタビューで、この「友達」はガラスのブルースに登場するのと同じ猫ですかと尋ねられ、藤原さんはこう答えています。

「歌詞の中では『猫』って書いてないんだよね。そうだ。俺の中ではもう、飼っていたというか……その猫のことなので。だから今、『猫の話』って普通に聴いていましたけど、猫っていうふうには書いていないんだ……確かにそうだ。おっしゃるとおりです。これは同じ猫のことを書いてますね。」
(https://natalie.mu/music/pp/bumpofchicken/page/4)

 
◆「ここに誰が居たかっただろう それが僕にもなり得る事」について
「そこに君が居なかった事」などの「そこ」は過去の世界、思い出の世界であることは曲の内容から明らかですが、この「ここ」の意味についてはあまり手がかりがありません。ここ=お墓のことであるとし、歌詞を「このお墓に誰が入りたかっただろう(入りたいわけがない)、でも僕もこうなるかもしれない」というふうに取ることもできるかもしれません。

しかし二番の歌詞に「そこに僕が居なかった事 今は側に居られる事」とあるので、この流れからすると、ここ=君の側と考えるのが最も自然かと思われます。ですので今回の解釈ではその意味にとって、「今は僕が君のそばにいるけど、別の誰かがここに居たかったかもしれない(でも居ることが叶わなかった)、もしかしたら僕もその人の立場だったかもしれない」と解しています。

 
◆曲名の「R.I.P.」について
「R.I.P.」は西洋のお墓などに刻まれる文字で、意味は「安らかに眠れ」。ラテン語に由来しますが、英語では “rest in peace” となり、曲中のコーラスにもなっている言葉です。先ほどのインタビューではこのように語られています。

「『なんで『R.I.P.』なのか』ということについては、言おうと思えば言えるんですけど。でも、言わないでおこうかな、と思っているんです(笑)。人それぞれが感じるR.I.P.を想像していただければ、と思っているので。それは例えば、物に対してのR.I.P.でもいいし、記憶に対してのR.I.P.でもいいし……何に対してでもいいんですよ。」

※ 2018/03/16更新